目覚めた人しか知らない常識 その08
栄養素の表は、埋まった。
それで、あなたは今日、何を噛んだのか。
粉を溶かす。ゼリーを吸う。錠剤を並べる。パッケージの裏には、一日に必要とされる数字がきれいに並んでいます。ビタミン、ミネラル、たんぱく質、食物繊維。すべて基準値以上。
早い。安い。考えなくていい。忙しい日にこれで済ませることを、責めるつもりはありません。皿を洗う体力が残っていない夜は、実際にあります。
これは、記事の入口を説明するための架空の場面です。特定の商品を名指しして危険だと言う話ではありません。
今回の“黒幕”は、食事を栄養素の一覧表に翻訳して、表さえ埋まれば食事は完成すると思わせる発想です。
先に結論です。問題は「足りているか」ではありません。
表の上で足りていることと、体の中で足りていることは、別の話です。栄養素は食材という束の形で届き、その束ごとに吸収の効率も、満腹の合図も、噛む回数も変わります。単離して大量に入れた栄養素が、食材の中の同じ栄養素と同じようには働かなかった試験は、すでに公開されています。完全食を使うなとは言いません。食材を置き換える口実にするな、と言っています。この記事は診断や治療の代わりではありません。
測定された結果と、観察された関連と、説明用の例は分けて書きます。サプリや完全食を「毒」とは呼びません。ただし、公開試験で測定された害を「可能性」という言葉で薄めることもしません。
01 / 表が埋まることと、体に入ることは別
ラベルの数字は、口に入れた量です。
体に入った量ではありません。
バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)とは、口に入れた栄養素のうち、実際に吸収されて体で使える割合のことです。この割合は栄養素の種類だけで決まりません。それが何と一緒に、どんな形で入ってきたかで動きます。
鉄が分かりやすい。米国立衛生研究所(NIH)の資料は、肉・魚介に多いヘム鉄のほうが植物性の非ヘム鉄より利用されやすいこと、食事全体からの鉄の吸収率が混合食でおよそ14〜18%、菜食中心の食事では5〜12%になることを整理しています。さらに、ビタミンCや肉・魚介は非ヘム鉄の吸収を高め、穀類や豆類に含まれるフィチン酸、ポリフェノール、カルシウムは吸収を下げる。菜食者の鉄の必要量は、動物性食品を食べる人の1.8倍とされています。[1]
同じ「鉄10mg」でも、何と一緒に食べたかで体に入る量が変わる。栄養成分表示は、この差を書きません。書けないのです。表示は原料に含まれる量であって、あなたの腸を通った量ではないからです。
ラベルは、口に入れた量しか保証しない。
吸収の効率は、その栄養素が何と一緒に、どんな構造で入ってきたかで決まります。
02 / 食材は、栄養素を“束”で運んでくる
野菜は、ビタミンの入れ物ではない。
栄養素を届ける構造そのものです。
食品マトリックスという言葉があります。食材の中では、栄養素がバラバラに浮いているのではなく、細胞壁、脂質、繊維、水分という構造の中に収まっている。この構造が、吸収の速さも量も変えます。
脂質と一緒に入ると、カロテノイドは桁で変わる
Unluらの試験では、21〜42歳の健康な63人を対象に、サラダやサルサにアボカドまたはアボカドオイルを加える条件が比較されました。加えた条件で、αカロテン、βカロテン、ルテイン、リコペンの吸収が数倍から十数倍に増えています。油を足しただけで、皿の上の野菜は変わっていないのにです。[2]
これは少人数の吸収試験です。血中に増えた分だけ健康になった、という証明ではありません。ただし「同じ野菜でも、一緒に食べたもので体に入る量が変わる」ことは、ここで測定されています。
丸ごとの形は、カロリーの入り方まで変える
Novotnyらは18人の成人を対象に、アーモンドを0g、42g、84g含む管理食を18日ずつ食べてもらい、実際に代謝されたエネルギーを測定しました。結果は4.6kcal/g。計算表(Atwater係数)が示す6.0〜6.1kcal/gより低く、従来の計算は約32%の過大評価だったと報告されています。[3]
細胞壁に包まれた脂質の一部は、噛んでも消化しきれずに通り過ぎる。同じアーモンドでも、粉にして飲めばこの構造は消えます。栄養素の一覧表は同じでも、体に入る量は同じではありません。
食材は、栄養素と一緒に“構造”を運んでくる。
その構造が、吸収率も、満腹の合図も、噛む回数も決めています。粉にした時点で、表に載らない部分が抜け落ちます。
03 / 単離して大量に入れた試験は、何を見せたか
「野菜を食べる人は健康だ」から、
「その成分を錠剤で飲めばいい」は導けない。
観察研究では、カロテノイドを多く含む食品をよく食べる人ほど、特定の病気が少ない傾向が繰り返し見つかっていました。そこで、成分だけを取り出して大量に飲ませたらどうなるかが試されました。結果は、期待とは逆でした。
ATBC:フィンランドの喫煙者29,133人
50〜69歳で1日5本以上喫煙する男性29,133人に、αトコフェロール50mg/日、βカロテン20mg/日、またはその両方を中央値6.1年投与した試験です。βカロテンを与えられた群で、肺がんの発症が増えました。[4]
CARET:中止された試験
喫煙歴やアスベスト曝露で肺がんの危険が高い人を対象に、βカロテン15mgとレチノール25,000IUを毎日投与した米国の試験です。米国国立がん研究所(NCI)の資料は、この試験で肺がんの増加と総死亡の増加が示され、試験が予定より早く中止されたと記しています。[5]
SELECT:ビタミンEと前立腺がん
50歳以上の男性35,000人以上を、セレン、ビタミンE(400IU/日)、両方、プラセボの4群に無作為に分けた試験です。約7年の追跡で、ビタミンE単独群の前立腺がんが17%多いという結果が公表されました。実数では1,000人あたり76例対65例、11例の増加です。[6]
78試験・296,707人をまとめると
Bjelakovicらのコクラン・レビューは、抗酸化サプリの無作為化試験78件・296,707人を統合しました。バイアスの少ない試験に限った解析で、βカロテンは総死亡の相対危険1.05(95%信頼区間 1.01〜1.09)、ビタミンEは1.03(1.00〜1.05)。ビタミンCとセレンには死亡率への有意な影響は認められませんでした。著者らは、一次予防・二次予防のいずれについても抗酸化サプリを支持する根拠は見つからなかったと結論しています。[7]
公的機関の勧告も、ここに追随しています。米国予防医学専門委員会(USPSTF)は2022年、心血管疾患とがんの予防目的でのβカロテンとビタミンEの使用に反対する(グレードD)と明記しました。マルチビタミン、および単独・二剤の栄養素サプリについては、利益と害のバランスを評価する根拠が不十分(グレードI)としています。[8]
ここは正確に読んでください。これらは「サプリを飲むと必ずがんになる」という話ではありません。対象は主に喫煙者や高リスク者で、用量も日常の食事量をはるかに超えています。しかし、逆向きの読み替えも同じく禁じ手です。「食品に入っているのだから、濃縮しても安全なはずだ」という推論は、これらの試験で否定されました。
食材の中の成分と、瓶に詰めた同じ成分は、同じものではない。
少なくとも、体の中で同じように振る舞うという保証は、試験によって取り消されています。
04 / 食品からの栄養素と、瓶からの栄養素
同じ栄養素名でも、
どこから来たかで結果が分かれた。
Chenらは、米国の20歳以上30,899人を中央値6.1年追跡し(死亡3,613件)、栄養素の摂取源別に死亡率との関連を調べました。ビタミンA、ビタミンK、マグネシウム、亜鉛、銅の十分な摂取は、総死亡または心血管死の低さと関連していた。ただしその関連は、食品からの摂取に限られていました。[9]
さらに、サプリからのカルシウムを1日1,000mg以上摂っている人では、がん死亡の増加が観察されています。多変量調整後の率比1.53(95%信頼区間 1.04〜2.25)。食品からのカルシウムでは、この関連は見られませんでした。
これは観察研究であり、因果の証明ではありません。サプリを飲む人ともともとの健康状態が違う可能性も残ります。それでも、「栄養素の名前が同じなら結果も同じ」という前提は、このデータでは支持されませんでした。
05 / 効いた介入は、成分ではなく食材の組み替えだった
成分を足す試験は空振りした。
食材を組み替える試験は、当たった。
DASH:野菜と果物を増やしただけで、血圧が動いた
459人を対象に、通常の米国型の食事、果物と野菜を増やした食事、そこに低脂肪乳製品などを加えた組み合わせ食(DASH食)を比較した無作為化試験です。組み合わせ食では収縮期/拡張期の血圧が5.5/3.0mmHg低下し、高血圧のある人に限れば11.6/5.3mmHgの低下でした。果物と野菜を増やしただけの群でも血圧は下がり、低下幅は組み合わせ食より小さいと報告されています。[10]
この試験で配られたのはサプリではありません。食材です。
PREDIMED:オリーブオイルとナッツ
心血管疾患のリスクが高い7,447人を、エクストラバージンオリーブオイルを補った地中海食、ミックスナッツを補った地中海食、脂質を減らす助言のみの対照群に割り付け、中央値4.8年追跡した試験です。主要複合エンドポイントのハザード比はオリーブオイル群0.69(95%信頼区間 0.53〜0.91)、ナッツ群0.72(0.54〜0.95)でした。[11]
この試験には注意書きが必要です。当初の論文は、一部の参加者で無作為割り付けの手順に逸脱があったことが判明して撤回され、2018年に再解析のうえ再公表されています。それでも、介入の中身が「錠剤」ではなく「油とナッツという食材」だったことは変わりません。
硬い証拠が出たのは、成分を足した側ではなかった。
血圧も心血管イベントも、動いたのは食材を組み替えた試験のほうです。これは「サプリが無意味」という宣言ではなく、証拠の重さが今どちらに乗っているかという話です。
06 / 「完全」という言葉を、契約書として読む
何をもって完全と呼ぶのか。
その定義を決めているのは、売る側です。
「完全栄養食」「完全食」に、法律上の定義はありません。各社が食事摂取基準などを参照して独自に設計しています。つまり「完全」とは、設計者が選んだ栄養素リストを満たしている、という意味です。リストに載っていないものについては、何も約束していません。
消費者団体の解説は、この点を具体的に挙げています。通常の食品にはポリフェノールなど多様な成分が含まれるが、加工品でそれを再現できるとは限らないこと。柔らかく噛まずに飲み込める食事が続けば、咀嚼や嚥下の機能が落ちうること。そして、これらの製品が実際にどれだけ健康を改善するのかは、まだはっきりしていないこと。[12]
加工の度合いそのものが、食べる量を動かした
Hallらは、成人20人を1か月間NIHの臨床センターに入院させ、超加工食の期間と最小限加工食の期間を2週間ずつ、順序を無作為にして食べてもらいました。両方の食事は、カロリー、糖、脂質、炭水化物、食物繊維の提示量を揃えてあります。好きなだけ食べてよい条件で、超加工食の期間は1日あたり約500kcal多く食べ、体重は0.9kg増加。最小限加工食の期間は0.9kg減少しました。[13]
この試験が測ったのは加工の度合いであって、完全食という商品カテゴリーではありません。しかし、成分表を揃えても食べる量が変わったという事実は、「栄養素が同じなら食事は同じ」という前提に直接ぶつかります。
制度が動いたのは、害が実在したからだ
2024年、紅麹を原料とするサプリメントで健康被害が相次ぎました。製造元が2024年6月28日に公表した資料では、6月26日時点で問い合わせ約143,000件、医療機関の受診者1,656人、入院者289人。摂取後に亡くなった事例として調査対象になったのは76件で、同社は死亡との因果関係の確認が想定よりはるかに困難であると述べています。[14]
因果が確定していないことは、この記事でも強調しておきます。同時に、日本では2024年9月1日から、機能性表示食品などについて、医師が食品との関連を否定できないと診断した健康被害の情報を行政へ届け出ることが義務づけられました。[15]
制度は、起きていない害のためには変わりません。
「完全」は、栄養素リストに対する言葉です。
食事に対する言葉ではありません。使うなとは言いません。ただし、その一食が何を代わりに引き受け、何を引き受けていないかは、あなたが知っておく必要があります。
07 / 摂るべき量を、数字で置く
基準値は、欠乏しない量です。
最適な量として決められた数字ではありません。
数字を出す前に、前提を一つ置きます。食事摂取基準の「推奨量」は、ほとんどの人が欠乏を起こさない水準として設定された値です。そこを超えたら健康が最大になる、という意味の数字ではありません。同じ理屈で、野菜350gも「これ以上は無駄」という上限ではない。基準値は床であって、天井ではありません。
日本が掲げている数字と、その出どころ
厚生労働省の健康日本21(第三次)は、成人の野菜摂取量の平均値を1日350g、果物摂取量の平均値を1日200gという目標を掲げています(目標年度は令和14年度)。[16]
この350gがどう算出されたかは、目標一覧そのものには書かれていません。自治体の解説などでは、カルシウム、カリウム、ビタミンC、食物繊維といった複数の栄養素を確保するために必要な量として計算された値だと説明されています。一方、果物200gのほうは、冠動脈疾患・脳卒中・総死亡のリスクと摂取量の関連を検討した研究に基づくとされています。[17]
つまり、野菜350gは疾病リスクから直接引いた数字ではありません。栄養素の充足から逆算された値です。ここを取り違えると、「350g食べれば死亡率が最小になる」という読み方をしてしまいます。そうは書かれていません。
実測はこうです。令和5年の国民健康・栄養調査による20歳以上の野菜摂取量の平均値は256.0g(男性262.2g、女性250.6g)。最も少ないのは20代で、男性230.9g、女性211.8g。過去10年で男性は有意に減少しています。果物は目標200gに対し、ベースライン値が78.1gです。[18]
国際的な基準と、リスク研究が示す幅
世界保健機関(WHO)は、10歳以上のすべての人に、果物と野菜を合わせて1日400g以上を勧めています(2〜5歳は250g以上、6〜9歳は350g以上)。[19]
では、400gより上はどうか。ここで研究の結果が割れます。
Auneらは95のコホート研究(対象は解析ごとに22万〜212万人)を統合し、果物と野菜の摂取が1日200g増えるごとに、総死亡の相対危険0.90(95%信頼区間 0.87〜0.93)、冠動脈疾患0.92、脳卒中0.84、総がん0.97という関連を報告しました。そしてリスクの低下は、がんを除くすべての結果で1日800gまで続いた(がんは600gで頭打ち)としています。野菜単独では550〜600gまででした。[20]
一方、Wangらは28のコホート、延べ200万人超を統合し、死亡率が最も低かったのは1日5皿(果物2皿と野菜3皿、およそ400g)で、それ以上食べても追加の低下は見られなかったと報告しています。2皿の人と比べ、5皿の人は総死亡13%、心血管死12%、がん死10%、呼吸器疾患死35%低い。ただし、でんぷん質の野菜と果汁には、この関連が認められませんでした。[21]
上限をどこに置くかは、まだ決着していません。ここを断定する記事は疑ってください。そのうえで、日本の目標を足し算してみます。野菜350g+果物200g=550g。WHOの400gを超え、Wangのプラトーも超え、Auneの800gには届かない。低すぎるとは言えず、上限を主張する研究に照らせば控えめ、という位置です。
しかし実測を足すと、話が変わります。野菜256.0g+果物78.1g=334g。日本人の平均は、最も控えめな国際基準である400gにすら届いていません。
議論すべきは、上限ではありません。
800gか400gかを決める前に、日本人の平均は最も低い基準にも届いていない。目標値が低いかどうかより、目標値との差のほうが、はるかに大きい。
たんぱく質は、測り方で数字が動く
日本人の食事摂取基準(2025年版)の推奨量は、18〜64歳で男性65g/日、女性50g/日。65歳以上は男性60g/日、女性50g/日。総エネルギーに占める目標量は18〜49歳で13〜20%、50〜64歳で14〜20%、65歳以上では下限が上がって15〜20%です。[22]
この推奨量は、窒素出納法という方法で求めた維持必要量0.65g/kg体重/日を出発点に算定されています。体重1kgあたりに直すと、およそ0.9g。ここが議論の的です。
指標アミノ酸酸化法(IAAO)という別の測定法で若年成人を測り直した研究では、平均必要量0.93g/kg、集団の安全側で1.2g/kgという値が得られています。従来法に対して、平均で約41%、安全側で約50%高い。窒素出納法は必要量を低く見積もる、という指摘が方法論の側から出ているということです。[23]
目的別の推奨も、上を指しています。PROT-AGEの提言は、健康な高齢者で1.0〜1.2g/kg、急性または慢性の疾患があれば1.2〜1.5、重症の場合は2.0まで。運動している人には1.2以上を勧めています。ただし糸球体濾過量30未満の重度腎障害で透析を受けていない人は、増やすのではなく制限する側だと明記しています。[24]
Mortonらのメタ解析(49試験、1,863人)では、レジスタンス運動による筋量の増加が頭打ちになるのは、およそ1.6g/kg/日でした。[25]
体重60kgの人で並べてみます。食事摂取基準の推奨量なら約54g。PROT-AGEの基準なら60〜72g。筋量を増やしたいなら約96g。下と上で、倍近い開きがあります。日本の2025年版が65歳以上の目標量の下限を15%エネルギーへ引き上げているのも、同じ方向への調整です。
ここも読み違えないでください。1.6g/kgは筋量を増やしたい人の数字であって、全員の目標ではありません。腎機能が落ちている人では、量を増やすこと自体が害になりえます。数字を上げる前に、自分がどの集団に属するかを確認してください。
基準値は下限です。上限ではありません。
ただし「下限だから上げてよい」が全員に当てはまるわけでもない。上げるべき人(高齢者、運動する人)と、上げてはいけない人(重度の腎機能低下)は、同じ表の中に混ざっています。
そして、これらの数字はいずれも「食品からの摂取」を前提に設定されています。必要量が上振れするほど、粉と錠剤で埋めきれない部分は増えます。表を埋めるのが難しくなるのではありません。表に載らない部分の比重が、上がるのです。
08 / 本記事からの実践提案
黒幕への対抗策は、高価な粉ではない。
皿の上の順番を変えることです。
治療としてではなく、観察として、一週間だけ試してください。
- 野菜を一皿足す。目標350gとの差はおよそ90g。果物まで含めても、日本人の平均はWHOの最低ライン400gに届いていません。生の葉物なら両手一杯、加熱すれば小鉢一皿ぶんです。一食に集中させず、朝と夜に分けたほうが続きます。
- 緑黄色野菜には、油を一緒に置く。ドレッシング、ごま、ナッツ、アボカド、炒め油。脂質のない条件よりカロテノイドの吸収が大きく上がることは、試験で測定されています。
- たんぱく質を、一日の中で三回に割る。夜だけに寄せない。成人男性65g、女性50gは下限の目安です。65歳以上の人、運動している人は、体重1kgあたり1.0〜1.2gを目安に上へ寄せる。腎機能に不安がある人は、増やす前に医師へ確認してください。
- 液体と粉を、丸ごとの形に一つ戻す。果汁を果物に、粉を粒に。噛む回数と満腹の合図が変わります。
- 完全食を使うなら、置き換えるのは一日一食までにする。忙しい昼を助ける道具として使い、朝と夜まで明け渡さない。
- サプリを飲むなら、目的と量を紙に書き、かかりつけの医師と薬剤師に伝える。とくにビタミンA・E・βカロテン・カルシウムのような、過剰摂取のリスクが公開試験で示されている成分は、複数の製品で重複しやすい。
- 一週間、記録する。何を食べたかではなく、野菜が何皿だったか、噛む食事が何回あったか、その週の体調と便通に何が起きたかを一行で。
喫煙している人は、βカロテンのサプリを自己判断で始めないでください。この集団でこそ、害が測定されています。妊娠中・授乳中の人、持病のある人、薬を飲んでいる人は、サプリの追加前に必ず医療者に相談してください。
食事が思うようにとれない状態が続く場合、あるいは体重が意図せず減っている場合は、自己流の調整より先に医師や管理栄養士へつないでください。この記事は診断や治療の代わりではありません。
あなたが買ったのは、食事ですか。
それとも、食事をしたという安心ですか。
完全食もサプリも、それ自体が敵ではありません。時間のない人、噛む力が落ちた人、特定の栄養素が本当に不足している人にとって、これらは実際に役に立ちます。問題はそこではない。
問題は、栄養素の一覧表が埋まった瞬間に、食事について考えるのをやめてしまうことです。表は、あなたが何を噛んだかを知りません。何と一緒に食べたかも、どれだけ吸収したかも、来年もそれを続けられるかも記録しません。
表を埋めるのは簡単です。食材を選ぶより、ずっと簡単です。だからこそ、それは売り物になります。
持ち帰ること。
やめる:栄養成分表示が満たされていることを、食事が足りている証拠として扱うこと。目的も量も書けないままのサプリの追加。丸ごとの食材を、粉と液体で一日じゅう置き換えること。
確かめる:この一週間で、野菜は何g足りなかったか。噛む食事は何回あったか。飲んでいるサプリの成分が、複数の製品で重複していないか。
相談する:持病、服薬、妊娠・授乳、意図しない体重減少があるなら、サプリを足す前に医師・薬剤師・管理栄養士へ。この記事は診断や治療の代わりではありません。
錠剤を数える前に、
今日、何を噛んだかを思い出せ。
出典・資料の読み方
本文中の番号に対応します。関連を因果と読み替えず、高リスク集団を対象とした試験の結果を、そのまま一般の人へ一般化していません。
- NIH Office of Dietary Supplements:Iron — Health Professional Fact Sheet — 食事全体からの鉄の吸収率(混合食14〜18%、菜食5〜12%)、吸収の促進因子と阻害因子、菜食者の必要量1.8倍。栄養素の吸収が食事の組み合わせで変わることを示す公的資料。
- Unlu ら(2005)Carotenoid Absorption from Salad and Salsa by Humans Is Enhanced by the Addition of Avocado or Avocado Oil, J Nutr — 21〜42歳63人の吸収試験。脂質を加えるとカロテノイドの吸収が大きく増加。血中濃度の変化を測ったもので、健康アウトカムの試験ではない。
- Novotny ら(2012)Discrepancy between the Atwater factor predicted and empirically measured energy values of almonds in human diets, AJCN — 成人18人の管理食試験。アーモンドの実測代謝エネルギーは4.6kcal/gで、計算表による予測を約32%下回った。食品の構造がエネルギーの取り込みを変えることの実測例。
- ATBC Cancer Prevention Study(1985〜1993、追跡継続) — 50〜69歳の男性喫煙者29,133人、αトコフェロール50mg/βカロテン20mg、中央値6.1年。βカロテン群で肺がん発症が増加。対象は喫煙者であり、非喫煙者への一般化はできない。
- NCI:Antioxidants and Cancer Prevention — CARET(βカロテン15mg+レチノール25,000IU)で肺がんと総死亡が増加し試験が早期中止されたこと、ATBC・SELECTの概要をまとめた公的解説。
- SELECT(Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial)2011年報告 — 50歳以上の男性35,000人超、ビタミンE 400IU/日、約7年。ビタミンE単独群で前立腺がんが17%増、1,000人あたり76例対65例。
- Bjelakovic ら(2012)Antioxidant supplements for prevention of mortality…(Cochrane Database of Systematic Reviews) — 78試験・296,707人。バイアスの少ない試験でβカロテンRR1.05(1.01〜1.09)、ビタミンE RR1.03(1.00〜1.05)。ビタミンC・セレンは有意差なし。
- USPSTF(2022)Vitamin, Mineral, and Multivitamin Supplementation to Prevent Cardiovascular Disease and Cancer — βカロテンとビタミンEの使用に反対(グレードD)。マルチビタミン、単独・二剤の栄養素は根拠不十分(グレードI)。予防目的についての勧告であり、治療目的の補充を否定するものではない。
- Chen ら(2019)Association Among Dietary Supplement Use, Nutrient Intake, and Mortality Among U.S. Adults, Annals of Internal Medicine — 30,899人、中央値6.1年、死亡3,613件の観察研究。死亡率の低さとの関連は食品からの摂取に限られ、サプリからのカルシウム1,000mg/日以上はがん死亡と関連(率比1.53、1.04〜2.25)。観察研究であり因果の証明ではない。
- DASH 試験(1997)A Clinical Trial of the Effects of Dietary Patterns on Blood Pressure, NEJM / 解説レビュー — 459人の無作為化試験。組み合わせ食で5.5/3.0mmHg低下、高血圧者では11.6/5.3mmHg。果物・野菜を増やした群でも低下(幅は組み合わせ食より小さい)。
- PREDIMED(2018年再公表)Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet Supplemented with Extra-Virgin Olive Oil or Nuts, NEJM — 7,447人、中央値4.8年。ハザード比はオリーブオイル群0.69(0.53〜0.91)、ナッツ群0.72(0.54〜0.95)。当初論文は割り付け手順の逸脱により撤回され、再解析のうえ再公表された経緯がある。
- 京都生活協同組合:完全栄養食だけで大丈夫? — 「完全栄養食」に明確な定義がないこと、ポリフェノールなど加工品で再現しにくい成分、咀嚼・嚥下機能への影響、健康改善効果が不明である点の解説。消費者向けの解説であり、試験ではない。
- Hall ら(2019)Ultra-Processed Diets Cause Excess Calorie Intake and Weight Gain, Cell Metabolism / NIH プレスリリース — 成人20人の入院無作為化クロスオーバー試験。提示カロリー・糖・脂質・炭水化物・食物繊維を揃えた条件で、超加工食期は1日約500kcal多く摂取し体重0.9kg増、最小限加工食期は0.9kg減。加工度を比べた試験であり、特定商品の評価ではない。
- 小林製薬:紅麹関連製品による被害の発生状況について(2024年6月28日公表) — 2024年6月26日時点で問い合わせ約143,000件、受診者1,656人、入院289人、死亡事例として調査対象76件。因果関係は確定していないと同社が明記している。
- 消費者庁:機能性表示食品の今後について(2024年) — 2024年9月1日からの健康被害情報の届出義務化を含む制度見直しの資料。
- 厚生労働省:健康日本21(第三次)の目標一覧 — 野菜摂取量の平均値の目標350g、果物摂取量の平均値の目標200g(目標年度:令和14年度)。果物のベースライン値は78.1g。算出の根拠は目標一覧には記載されていない。
- 東久留米市:野菜は350g、くだものは200g、目標が決まっているのはなぜ? — 350gがカルシウム・カリウム・ビタミンC・食物繊維等を充足する量として算出されたこと、果物200gが冠動脈疾患・脳卒中・総死亡のリスク研究に基づくことの解説。自治体による解説であり、一次資料ではない。
- 厚生労働省:令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要 — 20歳以上の野菜摂取量の平均値256.0g(男性262.2g、女性250.6g)。20代が最少(男性230.9g、女性211.8g)。食塩摂取量9.8g。
- WHO:Healthy diet(ファクトシート) — 10歳以上は果物と野菜を合わせて1日400g以上、2〜5歳は250g以上、6〜9歳は350g以上。
- Aune ら(2017)Fruit and vegetable intake and the risk of cardiovascular disease, total cancer and all-cause mortality, International Journal of Epidemiology — 95コホートのメタ解析。200g増ごとに総死亡RR0.90(0.87〜0.93)、冠動脈疾患0.92、脳卒中0.84、総がん0.97。リスク低下は800g/日まで(がんは600g)。観察研究の統合であり、因果の証明ではない。
- Wang ら(2021)Fruit and Vegetable Intake and Mortality, Circulation / 米国心臓協会リリース — 28コホート、延べ200万人超。1日5皿(果物2・野菜3)で死亡率が最低で、それ以上の追加の低下は認められず。2皿比で総死亡13%低下。でんぷん質の野菜と果汁には関連なし。上限についてAuneらと結論が一致していない点に注意。
- 厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書 — たんぱく質の推奨量(18〜64歳:男性65g、女性50g/65歳以上:男性60g、女性50g)、目標量(18〜49歳13〜20%、50〜64歳14〜20%、65歳以上15〜20%エネルギー)。推定平均必要量は窒素出納法に基づき、維持必要量0.65g/kg体重/日を出発点とする。
- Elango・Levesque・Ball・Pencharz:Recent advances in determining protein and amino acid requirements in humans, British Journal of Nutrition(IAAO法のレビュー) — 指標アミノ酸酸化法による若年成人の平均必要量0.93g/kg、集団の安全側1.2g/kg。窒素出納法由来の値(平均0.66、安全側0.8g/kg)に対し、平均で約41%、安全側で約50%高い。少人数の代謝試験に基づく推定であり、公的基準はまだ更新されていない。
- Bauer ら(2013)PROT-AGE Study Group 提言 — 健康な高齢者1.0〜1.2g/kg/日、急性・慢性疾患1.2〜1.5、重症・外傷・低栄養で2.0まで、運動時1.2以上。糸球体濾過量30未満の重度腎障害(非透析)では制限側とする例外を明記。専門家グループの提言であり、単一の試験結果ではない。
- Morton ら(2018)Protein supplementation and resistance training-induced gains in muscle mass and strength, British Journal of Sports Medicine — 49試験・1,863人のメタ解析。除脂肪量の増加はおよそ1.6g/kg/日で頭打ち。レジスタンス運動を行う人を対象とした解析であり、一般成人の目標量ではない。
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