マイトレーヤとアメリカンゴッズ

マイトレーヤ

56億7000万年後にこの世に降り立ち、衆生を救うとされる未来仏。

日本では弥勒菩薩として知られます。


*ちなみに、よく仏像やお経で〇〇菩薩と呼ばれる存在がおりますが、菩薩とは「覚りを得る前の仏陀」という意味です。

〇〇如来というのもよく出てきますが、如来は「真如(真理)から来た者」の意味で、仏陀の同意語ですが、大乗仏教では覚りを得た様々な仏(諸仏)につける尊称として使われています。


で、弥勒菩薩(マイトレーヤ)といえば「弥勒菩薩半跏思惟像」が有名ですが、今日はそんな仏像についてちょっこり触れてから何か書いていこうかなと思います…

元々、仏教では信仰の対象はブッダの教えである「法」のみとされ、ブッダ個人を崇拝するのはタブーとされてきました。

しかし、ブッダ亡き後、ブッダを崇拝したいという信者の気持ちは徐々に具体性を帯びてきます。

最初に信仰の対象となったのはブッダの遺骨を納めた塔「ストゥーパ」です。*卒塔婆の語源でもあります。

その後、菩提樹、法輪、仏足石などのシンボルが信仰の象徴とされましたが、ブッダ本人がシンボルとして描かれたり、彫られたりする事はありませんでした。

ところが2世紀前半になると、インド北西部のガンダーラ地方で、ヘレニズム文化(ギリシャ)の影響を強く受けたブッダ像が彫られていきます。

あの…

少しばかり説明が面倒臭くなってきました…

で、色々とすっ飛ばすと、ヘレニズム文化の影響を受けて仏像製作が盛んになり、お釈迦様以外の仏である「諸仏」も形を持って次々と生み出されていきました。

*同時期に別地方でヘレニズム文化の影響を受けない純粋なインド文化による仏像も彫られています。



というわけで、本来はお釈迦様だけが実在のブッダだったにも関わらず、いわば創作である○○菩薩や、○○如来が数多く誕生します。

(お釈迦様自体も実在したどうか、これも諸説ありますが、近年の研究ではお釈迦様は実在したっていうのが有力らしいです)


創作、架空の存在であるそれら「諸仏」も信仰の対象になっていきますが…

存在しなかった者たちが人の手で生み出され、人の上に立つ存在になっていくのは、なんとも面白い過程です。

卵が先か鶏が先か…

実在するから信仰するのではなく、信仰するから信仰の対象がかたど)…られていく…

Amazon PrimeVideoのドラマ「アメリカンゴッズ」はそんなお話でした。


神々が存在するから人が信仰するのではなく、人の信仰が神々を実在させる…というなんともエキセントリックな着眼点の下にストーリーが繰り広げられます。

「古の神々」は今、現代人による信仰心が薄れ、その存在が危ぶまれ、現代の人間が信仰する「新しき神々」によって過去の物として葬り去られようとしている…

現代の人間が信仰する新しき神々とは…

古の神々と、新しき神々の戦いの火蓋が切って落とされる…

というような内容なのですが、まず、4話くらいまで観ないと「何が起きているのか全く分からない!」「一体何を見せられているんだ!?」と主人公であるシャドームーンと同じ混乱を共有できますが…

正直、本当に意味が分からない…

しかし、色々とぶっ飛んだ演出と、「どんな神経してたらこんな美しい映像が作れるんだ?」と映像美に魅せられ、ついつい見入ってしまい、4話以降になると「ああ、そういう事だったのか!?」と気付きのカタルシスを味わえます。

あまり言うとネタバレになるのですが、ヒントは「アメリカは移民の国」という事です。

移民の数だけ信仰があり…

ってな訳でですね、信仰と神の関係を逆手に取ったような発想はとても面白いです。

そういえば私もまだシーズン2の途中だったので、最初から観直さなければ…全部観終わったら原作の小説も読もう。

一つ注意点を挙げるとするなら米国でも「モザイクが薄すぎる!」とクレームが入るくらいエログロ描写が多いです…


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